JAXAとNHKが月周回衛星かぐやのハイビジョン放送をネット配信しないことは,『宇宙条約』に反するのではないかと.

JAXAとNHKがかぐやの月のハイビジョン放送をネット配信しないことは,宇宙条約に反するのではないかと.条約では宇宙空間での活動の結果は公衆に提供することになってますよ.

今更感はあるけれど,かぐやの月ハイビジョン映像をネット配信しないことにひとこと言っとくか.俺もハイビジョン映像見てないし.

まずは今北産業.

JAXAとNHKが月周回衛星かぐやのハイビジョン放送をネット配信しないことは,『月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約(以下宇宙条約)』に反するのではないかと.

第11条

月その他の天体を含む宇宙空間における活動を行う条約の当事国は、宇宙空間の平和的な探査及び利用における国際協力を促進するために、その活動の性質、実施状況、場所及び結果について、国際連合事務総長並びに公衆及び国際科学界に対し、実行可能な最大限度まで情報を提供することに合意する。

国際連合事務総長は、この情報を受けたときは、それが迅速かつ効果的に公表されるようにするものとする。

1-2-2-5 月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約(1966年12月13日採択、第21会期国際連合総会決議第2222号、1967年10月10日発効) (ちなみにJAXAのサイトですよ)

つまり,「条約の当事国は,月における活動の結果を公衆に対して実行可能な最大限度まで情報を提供しなければならない」.すなわち,「日本政府は,かぐやの撮影したハイビジョン映像を世界中の人に対して(実行可能な最大限度の方法として)ネット配信しなければならない」ってことになる(よね?).我ながら少々強引.

ハイビジョン映像をネット配信しない(しなくてもいい)最大の根拠は,JAXA/NHKが持つハイビジョン映像に対する著作権だろう.仮に今,JAXA/NHKが著作権を盾にハイビジョン映像の公開を渋っているのならば宇宙条約との関わりはどうなるのだろう?著作権法と宇宙条約のどちらを優先すべきなのだろうか?日本国憲法にはこうある.

[最高法規、条約及び国際法規の遵守]

  1. この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
  2. 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守する事を必要とする。

中略

憲法以外の国内法と国際法規のどちらの効力が上位であるかという点も論争となっているが、一般的には、この日本国憲法第98条第2項によって慣習法を含める国際法・条約の効力は国内法のそれよりも上位であると定められている、と解されている(松井芳郎ほか著『国際法 第4版』有斐閣Sシリーズ)。

日本国憲法第98条 – Wikipedia

これは著作権を盾に公開を拒めないということになるのかな?

条約を守る責任は日本政府なのだけれども,JAXAとNHKは条約に縛られないのだろうか?JAXAは政府機関なのだが,NHKは政府機関ではない(これまた中途半端な組み合わせ). NHK が Lunar Embassy と同種の主張(:「私企業は宇宙条約の対象外だ!」という主張)をしない限りは,条約通りの結果になるのかな?

別の可能性として,日本政府が NHK が持つハイビジョン映像に対する著作権の一部を凍結する替わりに,その分を補償するというのもあるかもしれない.

#   今回はあまり深く考えていないで書いているのできっと穴だらけ.ツッコミよろしくです.

#  「サーバー代が…」なんてときは国家の主権者たる国民からボランティアで BitTorrent のノードを募集すれば良いよ.

#  JAXA/NHK が今後ネット配信してから「何でもっと早くやらなかったの?」というツッコミを受けたら,「かぐやの観測が一区切りしたから」とでも言い訳すれば良いんじゃないかな?宇宙条約を見ても迅速な情報提供は求めているように見えないしね.